研究系及び研究施設の現状 235
極端紫外光研究施設
加 藤 政 博(教授) (2000 年 3 月 1 日着任、2004 年 4 月 1 日昇任)
A -1)専門領域:加速器科学、放射光科学、ビーム物理学
A -2)研究課題:
a) シンクロトロン放射光源の研究 b)自由電子レーザーの研究
c) 相対論的電子ビームを用いた光発生法の研究
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) 2003年度に成功裏に立ち上がった光源加速器 U V S OR - I I の更なる性能向上に向けた開発研究を継続している。 UV S OR -IIの高輝度という優れた特徴は一方でビーム寿命の短縮をもたらす。この問題を解決するためにその第一 段階として高周波加速空胴の増強を2005年春に実施しビーム寿命の改善を確認した。また,この問題に対する究極 的な解決策としてトップアップ入射による一定電流運転の導入を引き続き検討している。UV S OR -IIで光源の主力 となっているアンジュレータの4号機となる可変偏光アンジュレータの設計を行い,2006年夏の導入を目指して製 作を進めている。
b)高度化された光源加速器UV SOR -IIの高品質電子ビームを自由電子レーザーに用いることで従来よりも短波長域で の大強度発振が可能となった。高度化以前には発振可能波長限界に近かった250 nm付近で数100ミリワットの高い 平均出力を得,生体物質への照射実験に供した。またフランスの研究グループと協力し,蓄積リング自由電子レー ザーの発振メカニズムやレーザー場のダイナミクスに関する研究を継続している。フィードバックによるレーザー 品質の改良に成功した。また,外部から導入したレーザーと電子ビームを相互作用させることでレーザーの三倍高 調波を発生することに成功した。これは将来の高品質ビームを使った短波長コヒーレント光生成の基礎研究である。 c) 通常のシンクロトロン放射光に比べて桁外れに強いコヒーレント放射光をテラヘルツ領域において生成すること
に成功した。ある種のビーム不安定性により電子ビーム上に波長程度の密度揺らぎが形成されコヒーレント放射が 起きているものと解釈しており,その発生メカニズムについて研究を継続している。また,外部から導入した極短パ ルスレーザーにより,人為的に密度の変調を形成し,コヒーレント放射光を発生する試みに成功した。
B -1) 学術論文
A. MOCHIHASHI, M. KATOH, M. HOSAKA, K. HAYASHI, J. YAMAZAKI, Y. TAKASHIMA and Y. HORI, “Ion Trapping Phenomenon in UVSOR Electron Storage Ring,” Jpn. J. Appl. Phys. 44, 430–437 (2005).
Y. NONOGAKI, M. KATOH, K. MATSUSHITA, M. SUZUI and T. URISU, “Construction of the Undulator Beamline Equipped with a UHV-STM for Observations of Synchrotron Radiation Stimulated Surface Reaction,” J. Electron Spectrosc. Relat. Phenom. 144-147, 1113–1116 (2005).
Y. TAKASHIMA, M. KATOH, M. HOSAKA, A. MOCHIHASHI, S. KIMURA and T. TAKAHASHI, “Observation of Intense Bursts of Terahertz Synchrotron Radiation at UVSOR-II,” Jpn. J. Appl. Phys. 44, L1131–L1133 (2005).
236 研究系及び研究施設の現状 B -7) 学会および社会的活動
学会の組織委員
加速器科学研究発表会世話人 (2001-2003). 加速器学会設立準備委員会委員 (2003). 加速器学会組織委員 (2004- ).
学会誌編集委員
放射光学会誌編集委員 (2000-2002). 科学研究費の研究代表者、班長等
科学研究費補助金基盤研究(B )(2)代表者 (2003-2004). 科学研究費補助金基盤研究費(B )代表者 (2005- ). その他の委員
日中拠点大学交流事業(加速器科学分野)国内運営委員会委員 (2000- ). 佐賀県シンクロトロン光応用研究施設・光源装置設計評価委員 (2001- ).
むつ小川原地域における放射光施設整備に係る基本設計等調査評価会(加速器)委員 (2001- ).
B -8) 他大学での講義、客員
高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 , 客員教授 , 2004年 - . 東京大学物性研究所 , 嘱託研究員 , 2002年 - .
B -10)外部獲得資金
基盤研究(B )(2), 「電子蓄積リングによる遠赤外コヒーレント放射光の生成」, 加藤政博 (2003年 -2004年). 基盤研究(B ), 「レーザーと電子ビームを用いたテラヘルツコヒーレント放射光の生成」, 加藤政博 (2005年 - ).
C ) 研究活動の課題と展望
UV SOR 高度化計画は成功裏に終了し,現在は,高度化された加速器群の性能を最大限引き出す努力を継続している。当 面の課題であったビーム寿命については,2005年に実施した高周波加速空胴の増強により改善された。次のステップであ るトップアップ運転の実現に向けて,シンクロトロンのフルエネルギー化,放射線遮蔽増強を進めている。一方,高度化で増 設された直線部へのアンジュレータの導入も進めており,2006年夏には4台目となる可変偏光型のアンジュレータを導入す る予定である。設計は完了し,現在製作を進めている。
自由電子レーザーに関しては,光源リングの高度化により深紫外から真空紫外領域での高出力化,高安定化が視野に入っ てきた。現在は円偏光深紫外レーザー光の生体物質への照射実験を行っているが,今後,真空紫外域での発振実現を目 指して研究を進めていく予定である。また,発振メカニズムやレーザー場のダイナミクスといった自由電子レーザーの基礎的 な研究,フィードバックの手法によるレーザー品質の向上という実用的な研究の両方をフランスのグループと共同で開始し たが,極めて安定な発振が実現できているUV SORならではの興味深いデータが既に得られており,今後も共同研究を継続 していきたいと考えている。
昨年度導入した極短パルスレーザーにより,テラヘルツ領域でのコヒーレント放射の生成,真空紫外領域でのコヒーレント高 調波発生に成功した。今後は実用化を意識して,更に研究を進めていきたいと考えている。